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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁
そのうえ途中で島前の船手を糾合してみると、これがまたほとんど支離滅裂の状態だ。
もっとも能登ノ介清秋が宮方の手に拉致されて行った風聞はもう島々に高かったから、それ一つでも士気の沮喪はやむをえないことではあった。けれどこのおびただしい追捕の船列が、翌晩、みすみす伯耆沖で帝の逃亡船らしきものをみとめながら、それを拿捕できず、かえって一夜中、疲労困憊のさまよいを海上にみせていたのは、いったい何の理由であったのか。
清高は、錯覚したのだ。
あのさい、べつな方向へ、遮二無二逃げてゆく一舟群を見たのである。
追っかけてみると、その舟群からは猛烈な抵抗があり、それこそ天皇坐乗のものにちがいなしと直感された。そこで彼は、全船列の舟かがりを滅灯させ、どこまでもと、追跡して行ったものだった。
ところが、夜が明けてみると、そこはもう石見沿岸寄りの近くで、名も知れぬ島嶼のかげに隠れこんだ相手の大小の船をみると、その帆ばしらや舳には、樺色地に白く“唐梅紋”を抜いた海賊旗をかかげている。――つまり名うてな阿波の岩松党だ。さてこそ不審。――清高は一そう疑いを深くした。
このため彼は岩松党を相手に、半日以上にもわたる喧嘩腰の交渉につい時をつぶしてしまった。