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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁
息ノ浜の宿営地から街の探題邸までは、入江に沿った松原つづきで、途中に櫛田神社がある。
「…………」
その前で、彼はちょっと馬をとめた。降りようとした風である。しかし降りもせず黙祷もせず過ぎ去った。
博多の探題邸は一城郭のおもむきをなしていた。いわば筑紫九ヵ国の鎮台だ。少弐、大友、島津をはじめ鎮西の諸豪はみなもう駒をつないでいる風だった。
「肥後の寂阿でおざる。ただいま伺候つかまつッた」
すると、探題の侍所、広田新左衛門が中門で立ちはだかった。
「ご遅刻もはなはだしい。武時入道には何しておられた。すでに御会議はすすんでおる」
「ほ。さほどな遅参とも心得ぬが」
「それじたいが、いかに今日の時局へも無関心かを、尊公みずから言っているようなもの。お帰んなさい」
「なに立ち帰れと」
「着到に附すことはなり申さん」
「そうか」
「ご会議は明日もおこなわれる。明日は懈怠なくまかるがいい」
「む。出直そう」
武時は栗の皮のハジケたような笑いを一つ見せて、素直にそこは退きさがった。
しかし息ノ浜では晩にかけて、篝を焚き、酒をあたため、さかんな感興をわかせていた。――探題方の密偵は、その猥歌やら裸踊りの狂態を見とどけ、余りのばからしさに呆れて帰った。