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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁
――しかしなお崖の肌にペタとくッついたまま怯まない敵もある。それをも余さないためには、次に巨大な材木を横ざまにころがして落す。
楠木勢の戦術は、今日までおおむね、これをくり返して来たのである。
関東武者の長技は、馬と弓だが、その二つともここでは用をなさなかった。
また楠木方に何百倍する大兵もこの隘地では活かしようがない。ときには、大軍なるがゆえの不利さえ多い。――これまで仕懸けた数度の総攻撃にみても、寄手の死傷は城兵の比でなかった。例による太平記調ではあるが、
――四方ノ坂ヨリ転ビ落チ、落チ重ナツテ死スル者、一日ガウチ五、六千人ニモ及ベリ
軍奉行、長崎四郎左衛門ノ尉、実検シケルニ、執筆十二人ニテ、昼夜三日ノ間モ、筆ヲ措カズ、死者ノ名ヲ注セリトゾ
と、誇張にはしろ言っているほどである。そしてそんな戦の後ではまた、はるか東坂下の荼毘所で、日々夜々、誦経が聞え、死者の屍を焼くけむりが、千早からも毎日望まれるほどだった。
で、度々の失敗にこりた寄手は、そのご、めったに無謀は仕懸けて来なくなった。軍令さえ出して、
「無断ノ動キアルベカラズ」
と禁じ、
「奇功ハ功ニ数ヘズ、先駆ケハ厳罰ニ附ス」