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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁
裏金剛を抜け、どこへともなく去ッて行った。正成から託された四条隆資の一状を持って、大塔ノ宮のご所在をさがし求めに向ったもののようである。
静かで無事な籠城が二、三日つづいた。
敵味方に一人の死者も出ない日が、ここでは妙にうつろな日となっている。
正成は、やぐらの床几に腰かけて、ゆったり、思案にふけッていた。
ここではあまり遠くまでの展望はきかない。
ひがしの北山、前面の肩衝山、ほか幾ツもの小さい嶂巒や峰が、ふところの襟もとをなしていて、麓からの中津原道、観心寺道、ほか一道の三ツを峡門の口で括ッているのである。
「あのあたりで、鈴ヶ滝の水を堰止め、機をはかって堰を切れば、城下の敵勢は一挙に水びたしともなしえようが?」
それを考えているらしかった。
けれどそれには、城崖すぐ下の敵兵からまず先に一掃しなければならず、それも、
「是か、非か」
と考えられる。
城の守兵は、すでに千を欠いていた。残り少ない兵をさらに一兵でも失うのは良策でない。また堰工事をするとみれば、敵とて、あらゆる妨害はするだろう。
「……ま、それよりは、やはり持久か」
正成は、しきりにうずき出る智恵を、そばから自身否定し去っていた。