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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁
彼らは、憎む敵の顔も知らないのだ。ただ乱岩飛石の暴状にむかッて叫ぶ。
そして生き残りがまた這い出した。そのすきまを後続部隊が埋めてゆく。けれどたちまち、次の石弾が降っていた。一瞬、土けむりに交じる灌木の飛片や小石は、ただ黒い飛沫にすぎず、それに捲かれてなだれ落ちてゆく人間の土砂は声もなく、また余りに脆すぎて、ただの物質としか思えない。
「いかに楠木でも」
一人の指揮将は、半顔を血みどろにして、亡霊みたいに叫んでいた。
「天魔鬼神ではあるまい。たかのしれた城兵の数だ。おれを楯にしてつづいて来い」
彼は勇猛だった。さすが鎌倉武士を思わせるものがあり、彼につづく七、八人もまた見えた。そしてその一群は、ほとんど、とりでの上に近い勝負ノ壇までしがみつき、上からの槍、長柄など物ともせず、敵中の武者足場へ跳びあがったようである。しかし、そこでは必殺を期していた楠木勢の乱刃に会い、すべてたちどころに殲滅されたかのようだった。
そこ一ヵ所ではない。とりでの外輪の全面に、阿修羅の吠えは迫ッている。
千早谷の右端の、はるか上のあたりにも、一団の人旋風が忽然と現われて、
「奪ッた」