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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

「あたりまえだ。召使ではない」

「それでけっこうです。主君長崎どののお旨をうけて参上つかまつッた。寸時、ご談合いただけますまいか」

「うるさいな、再三」

だまって奥へ引っこんでしまった。それきりである。しかし時親は、やはり表が気になるとみえ、机辺の書物やら山絵図のごとき物を、ひとりごそごそと、かたづけていた。

そこへ婆が、贈り物の目録をもって来て、彼にみせた。兵の手で厨へ届けられたものだという。この戦時下では手に入らない品々がならべてある。「取ッておけ」と言ってから、時親はまた、

「しかたがない、一人だけここへ通せ」

と、いいつけた。

こんな練れている侍もあるものか、ずいぶん居づらいはずの書斎だが、足立源五はよくねばりこんでいた。そして、あるじの風向きをうかがいながら言いだした。

「いかがでしょうか。主人長崎殿から、さきにもお願い申してあることですが」

「わしにかい」

「されば、いちど陣中にお越しを仰いで、種々ご意見を伺いたいと、切に望んでおられますので」

時親は、そっぽを向いた。客嫌いな老人のよく見せる癖である。が、ぜひなげに、

「いやだよ」

と、やっと口をきき出した。