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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

かんのわるい子だったよ、物覚えものろかった。夜道にころんで、崖のソギ竹で片目をわるくしたような鈍な子だった。それがいまは、関東の大兵を苦しめている千早の大将と聞いて、いやはや、隔世の感だ。ただ驚き入っていたところだ」

「その正成に、とくべつ師弟のご慈愛はないのでおざるか」

「ないね。以来十数年も、正成はここへ見えたことはない。正季だけはよくやって来たが、あれは滅法な血気者、ここらに多い山家武者の若者と変らんしな」

「それだけで?」

「ま、そんなところだ」

「ならば、鎌倉どののために、寄手の陣中へ臨んで、秘策をおさずけ下されても、情に悖ることはないでしょう。今日は足立源五、主命にちかって参ったのです。かくのごとく三顧の礼に倣ってお願いをかさねまする」

「はははは」

時親は、喉ぼとけを転がした。

「諸葛孔明はこんな爺ではなかったろう。それにさ、数万の兵を擁しながら千早一つが陥せんとは、あまりに能がなさすぎよう。そんな所へ出向くのはまあ真ッ平だな」

「ではどうしても」

「む、帰ってもらおう」

「隠者っ」

「なんだ! その眼は」

「しからば訊ねるが」

「脅しか」

「脅しでない。腰の刀にかけて申す。