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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

「はははは」と、師直は大きく笑った。「――主人はなかなか人を観る明をそなえております。きっと、やつがれなれば、あなた様と駒が合うにちがいないと、お察しなされたものでございましょうわい。光栄至極に存じおります」

道誉にも今はわかった。

高氏以下ここの家中は、結束して、殻のような要心をかたく守っているのらしい。

つまり“毒には毒を”という制し方を取って、こんな男をわざと応対に出したものに相違なかろう、と彼は観る。

「師直とやら」

「はっ」

「せっかくな好意だ。饗応にあずかろう。かたがた、もっとくわしく、高氏どのの病状など訊いて帰らねば、台下へのご復命もできかねる」

「や、ごもっとも」

これが口癖か、師直は取ッてつけたような相ヅチの下に、

「ありがとう存じまする。ではご迷惑ながらべつな席まで少々お運びを」

と、先に立った。

外廊の沓脱石には、いつか穿履までそろえてある。そこらの家中の侍たちへ師直は小声で何かいい残していた。「――佐々木殿の供の衆には、供待ち部屋で、酒食を振舞うておくがいい。こちらは夜に入るかもしれんでな」――そんな意味に聞きとれる。

彼の案内にまかせて、道誉は大庭をななめに庭つづきの山すそをだいぶ歩いた。