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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁
そう言って、時親はまた、
「しかし、捨て難いのは、大江家伝襲の兵学の書物だ。兵書はわしの子のようなものだからの。といって持ち歩くわけにもゆかぬ。一トまとめにして書斎のうちに残してあるから、おまえらの手で或る時期まで、人目につかんように洞穴の内へでも匿しておいてくれい」
と、いいつけた。
「急なことになりましたな」
それ以上を甚内はたずねなかった。近郷一帯の戦場化を見て、おあるじの身の危なッかしさは、いつとも知れぬと、彼らも案じていたからだった。
あくる朝、時親は、甚内の息子の番作に牛を曳かせ、牛の背にのって、
「あとは、たのむ」
とだけで加賀田の渓谷から人里の方へ降りて行った。もう帰らないつもりだろうか、いつかはまた帰るつもりなのか。その姿を見送っていた甚内にも、わからなかった。
いくさ奉行長崎の名代、長崎与三種長が、ここへ見えたのは翌日だった。すでに隠者はいないと聞いて、彼らは大きな怪しみをあらたに持ち、家捜しなどを行ったうえ、甚内を拉して陣へひきあげていった。
すると、その騒ぎと入れちがいに、忍ノ大蔵がもどって来た。大蔵にはこんな事も予想のうちにあったのだろうか。