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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁
藤夜叉と不知哉丸とは、じつの母子ではあっても、あまりに藤夜叉がまだ若くてきれいなせいか、よそ目には、姉と弟のようだった。
それに一色家以下郷党のすべても、不知哉丸へたいしては、
おん曹司
あるいは、
わか君
と、君仕しているが、生母の藤夜叉をみる目には、前身の田楽女といういやしみが、たれの潜在意識にも多かれ少なかれあった。そして、しぜん不知哉丸までが、母の彼女を、
「藤夜叉、藤夜叉」
として、呼びすてにしてかえりみないふうだった。
このこと一つでも、かの草心尼母子とは、おなじ母子でも在り方がちがっていた。それと藤夜叉には道誉という魔の男の爪痕が深いいたでになっている。わが子にさえ、彼女の心の裏がわでは、たえずそんな体の母であることが、みずから責められ、それがかたちの上でも卑下になって、ついわれからも乳母か侍女かのような侍きになりがちだった。
だから、なにも知らず十一にもなった不知哉丸は、わがままいッぱいで、恐いもの知らずな小暴君の性をいよいよつのらせていたのである。――それに体は、ひよわいので、周囲はなおハラハラばかりさせられていた。――いまも何か気に入らないで、その小さい手がふいに蒔絵の双六盤をひッくり返し、賽も駒もガチャガチャにしてしまったらしく、右馬介がふと耳にしたのはそれだった。