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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

「はて?」

とそれを怪しんだ。

こんどの出兵令をうけた二十一藩のうちに、近江の佐々木道誉の名は編成の中になかったはずだからである。

それもあるし?

道誉といえば、たれも知るように、執権高時のそばには、何につけ欠くべからざるお気に入りの近侍人といっていい。その道誉が君侍をはなれて現地へ征くとはどういうわけか。どうして高時が手ばなしたのか。

「ありえぬことだが」

と、いぶかる足利家の家中であったが、

「いや、ありえなくはない。ありそうなことでもあるわ」

と、ひとり頷き顔でいたのは、例の家中でのきけ者、高ノ師直だけだった。

幕命がくだったのは、おとといだったが、ゆうべの夜半までは、高氏、直義をかこむ評議に過ぎ、かたく門扉をしめたまま、なんのうごきもしていない足利家だった。

その間、幕府からは、再々の使いがあり、足利家からも、弟の直義が幕府に出むいて、

「兄高氏事、このところ、病気のため」

と、釈明につとめたのだが、二度めにはことわるに辞もなくなって、

「ここ数日の、ご猶予を」

と、願い出ている。

しかし柳営がわでは、仮病とみて、あくまで即日発向を強い、遷延をゆるさぬのみか、こんどにかぎっては、いたく強硬なのである。