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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

でなければ、よくよくな、

「悪縁か?」

今日までの彼との公私、表裏、さまざまなものが回想の糸にもつれてくる。が、今日こそは、と唇が噛まれた。高氏の肩には、足利の族党四千の将士からその家族までの浮沈が今かかっていた。しぜん心もからだも硬ばッてくる。――と気づいて彼はしずかに呼息をなだめた。そして師の疎石和尚のことばを心に、ひとみも半眼に細めていた。

「…………」

チラと、道誉はもう廊の口に袴の端を見せていたのである。だが、高氏のその姿をながめて、何かちょっと、あやしんだふうだった。さだめし、まなこもらんらんと、硬直しているものと描いていた高氏とは案に相違していたので、ふと戸惑ッたのかもしれなかった。

「佐々木でおざる。お待たせ申した」

「お」

高氏はわずかに膝を向け直して、

「久しゅうおざった」

と、会釈を返した。そして、相手の身なりに、

「なんのいとまもなく、陣装のままで伺ったが、おゆるしをねがいたい」

「いや御辺はそれがもう当然常時のお支度だ、道誉の平服こそごかんべんありたい。夜来、不破の固めのため、一睡もいたしおらず、お越しと聞いたが、お見えまでのつかのまでもと、ふと手枕になったところ、いや、ぐっすりと時もわすれ、まことに失礼な仕った」