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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

どんな高い教養の香のある美しい筆蹟よりも、それに窺われる知性の幼稚さは、かえって無性に高氏の心をあわれませてきた。という以上にも掻きみだした。――で、つい封は切られ、そして披いてみると、一そうたどたどしい文字ばかりか、べつに黒々とばってんされた地蔵菩薩のお顔も出てきた。

うそつきです

あなたは

うそつき地蔵です

こんな物 こうしてやる

一生がい 恨んでやる

死ぬものですか

あなたは 私が

死ねばいいと思っている

にちがいないけれど……

藤夜叉の乱脈な筆は、こんな意味に読みとれる。

白い紙へ、女の怨みつらみを、抜け毛みたいにバラ撒いたかのような感情ムキ出しの墨の痕が、しどろであった。だのに、ぜひとも今夜、むかし二人が初めて会ったあの梅園のほとりへ来てくれという、凡の女の哀願も、切々と書かれてある。

そして、夜すがらでも、私はそこにお待ちしているでしょう、もし来てくれないなら、じぶんにもさいごの決心があると、そこだけは、男にとれば強迫とも感じられるような烈しいことばづかいを、そのまま筆に使っているのでもあった。

「…………」

やっと、読み判じてきて、高氏は一そう女があわれまれた。