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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

て、その栄座から、ひっ込めたものであったが、近年はとみに「――御快癒である」と、となえて、またぞろ、推して、執権の座に復させたものであった。――もちろん、そのウラには、北条氏内部の紛争やら犠牲者も出たりして、一時はここが武力の発火点にもなりそうだったが、笠置、赤坂の一挙のため、かえって、鎌倉は逆にかたまったといえる現状になっていた。

「や。……ようおやすみだ」

「どうしましょう?」

ほどなく、もどって来た道誉と茂時は、そこの“うつつなき人”のお寝相に、顔見合せて、たじろいだ。

へたに起せば、ごきげんを損じよう。そして、こじれ出したら、ご持病のお物狂いもおこりかねない。

「……まずは、もすこし、お目ざめまで、待ち申そう」

道誉の分別にしたがって、連署の北条茂時も、彼と並んで、そっと、遠くに坐っていることにした。

浜御所の広間である。いかにも、こころよげな高時のうたた寝だった。波音も、眠りをあやす階音になっている。

が、道誉の耳には、この波音も、時勢の吠え声に聞えていた。

「…………」

茂時とは、ほんとの胸など一語の語り合いもできないが、道誉はその茂時とたった今ふたりで、六波羅の急使たちと、表ノ間で対面し、風雲の急を、聞きとって来たばかりなのだ。