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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

そんな行為を自身いやしむような怯みなどはどこにもない。むしろ“あばく”興味に燃えている眼であった。

ところが、出てきたのは。

あどけない童女の人形一コと、香木の香苞と、唐筆と匂いのいい墨が一つ。

あとは十冊の書物だった。

書物はみな難しくて、能登には解らぬものである。――が、童女人形についていた紙札だけは彼にも読めた。それには、

瓊子作ル

と、幼げな優しい書体でかいてあった。

「なんだ、くだらぬ物ばかり」

童女人形も書冊も、能登には、そう見えただけのことらしく、

「さしつかえあるまい」

と判断の下に、その一ト包みは、やがて黒木の御所へ届けられていた。

瓊子作ル

とした童女人形は、一とき、後醍醐のお眼を涙にした。

瓊子内親王は、帝の何番目かの皇女である。――去年、都から父皇を慕って出雲まで来たが、会うこともかなわず、絶望のあまり米子の安養寺に入って、乙女尼になっていると、帝へも、風の便りがきこえていた。

「さては瓊子の形見か」

帝はしばし人形でない瓊子を抱いてやっているお気もちだった。しかし、うごかない人形の眸が、むごい親心を責めているようだった。いかにもおつらそうに、帝はすぐ横へやってしまわれた。