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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 猿回し

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控 猿回し(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 125,671 字 · 252 頁

青空文庫

身体がさわっても、変な眼で見ても、咳払をしただけでも、喧嘩の種に困りやしない」

そういうものかな――と言った顔で、八五郎は長い顔を撫でました。

「でも。二人が張り合っている男があるだろう、――例えば、丹波彌八郎といったような」

「誰があんな腰抜け彌八なんかを張り合って、命のやりとりをするものですか」

「それとも網干の七平かな」

「あの熊の子をね、フ、フ、八五郎親分は人がいい。――お萩さんとお房さんが張り合ったのは、もっと良い男で、もっと近くに居る人ですよ」

「それは誰だえ」

「当てて御覧なさい」

お半は身を翻すと、追っ駆ける八五郎の手をかわして、ツイと逃げました。

「待て待てもう少し訊くことがある」

などと、追いすがったところで、この女は八五郎の手に了えません。

店へ入って、案内する者もなく奥へ通ると、女将のお余野は、

「ま、八五郎親分、随分探しましたよ。親分に見放されちゃ、お葬いも出せやしません」

いそいそと迎えるのです。

「一と思案して来たのだよ。ところで、先刻は急いで見残したが、お萩の荷物を見せて貰おうか」

「どうぞ、此方へ――」

お萩の死体を取込んで、ザッと飾った部屋へ、八五郎は通されました。