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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 猿回し
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控 猿回し(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 125,671 字 · 252 頁
三
お余野はまるっ切り相手にもしてくれないのでした。腰抜け彌八が心魂籠めて書いた三百六十何本の色文も、浮気な娘達の一顧も買わずに、灰や泥になってしまったことでしょう。
三
「こんなわけだ、親分。殺された死骸があるのに、どう調べても殺し手が無いんだから癪じゃありませんか、何処を何う捜して見たものでしょう」
八五郎がもう一度、明神下の平次のところへ泣き込んだのは、それから三日も経ってからでした。
「仕様のねえ野郎だな、折角お前の手柄にさしてやろうと思って居るのに」
「へェ」
平次は大して忙しくも無いらしく、とぐろを巻いて煙草ばかり吸って居る此頃だったのです。
「お萩はまさか雷神に打たれて死んだわけじゃあるめえ。何んかこう証拠らしいものを掴めないものかな」
「それが何んにも無いんだから口惜しいじゃありませんか」
「先ず第一番に、旅に出たという主人の造酒助は何うした?」
「昨日帰りましたよ。町内の衆が多勢で出かけたんだから。こいつは嘘じゃありません」
「では主人も確かに下手人では無かったわけだ。――ところで、六人の女のうち、お前にチヤホヤするのは誰だ」
「そんなのはありゃしませんよ――少し口惜しいが」