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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 猿回し
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控 猿回し(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 125,671 字 · 252 頁
それに岩太郎の碁敵で、篠崎小平という四十年配の浪人者。出雲屋の孫店で、日頃恩顧を蒙っている田屋甚左衛門。それに本店に居る先輩の妾お峰と、手代の才六という三十男。これだけの人数が、月にも雪にも花にも宜しという、三宜楼の二階、折から三月十六日の朧ろ月を眺めて、まことに散々の狂態でした。
召使お滝――新たに雇入れられた妾のお滝は取ってようやく十七歳、拵え立ての粉の姉様人形に、生命を吹込んだような清らかな娘でした。家は鎌倉町の本店裏の路地に挟まれた駄菓子屋。母親一人の細い商で、資本に困って居るところを、野幇間の奇月が見付け、結構な株に投資する積りで少しばかりの金を貸しつけ、利に利を積らせて、とうとう娘を抵当流れに奪い取り、売物に花を飾らせて、出雲屋の岩太郎に、第三号の妾として人身御供に上げたのでした。
母親の丹精と、奇月の指図で、美々しく着飾った花嫁衣裳、角隠しはさすがに遠慮しましたが、四十五歳の花婿岩太郎と、金屏風の前に押し並んだ姿は、美しくもまた哀深い姿だったのも無理はありません。
散々泣き尽して、母親を手古摺らせて来たお滝は、最早涙も涸れた様子ですが、声の無い歔欷が、玉虫色に紅を含んだ、可愛らしい唇に痙攣を残して、それがまだ好色漢岩太郎の眼には、一段の魅力でもあったのです。