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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 猿回し

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控 猿回し(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 125,671 字 · 252 頁

青空文庫

「――」

黙って平次の前に崩折れた姿は、憐れ深くも美しい小娘でした。十七と言っても遅生れの、まだ門松を取ったばかり、十五と言っても随分通用しそうな若々しさで、四十五歳の岩太郎の玩具にするのは、誰の眼にも痛々しい限りです。

多い毛、品の良い下ぶくれの細面、お人形のような無邪気な唇の曲線が、どうかすると直ぐ泣き出しそうで、平次もうっかりしたことが訊けそうもありません。

眼は大きい方、うるんでいるのは、昨夜からの激動で、感情の嵐の処置に困っているせいとも見えます。

「この手紙は、お前が書いたのだろう?」

平次は八五郎の煙草入から出した、あの拙い字の半紙の手紙を畳の上に拡げて見せました。

「――」

お滝は素直にうなずきました。

「新吉とお前は、何んか約束したことでもあったのか」

平次はこう突っ込んで見る外はありません。脅え切っているこの小娘の口から、尋常一様のことでは、何んにも引出せそうは無かったのです。

「――」

お滝は黙って首を振りました。口へ出しては、何んにも言い度くない様子です。でも青白い頬のあたり、僅かに処女らしい血潮の流れたのを、平次は見逃す筈もありません。