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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 猿回し

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控 猿回し(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 125,671 字 · 252 頁

青空文庫

奇月宗匠はもうろれつも怪しくなって居ります。杯持参で主人席の前ににじり寄り、一杯献上しながらお世辞を言って居ります。

「ひどく嫌がるから、下で休まして居るよ。お前のような蛸入道が居ちゃ、娘は怖がるのも無理は無いよ」

主人岩太郎は悠揚と毒を言いながら、杯を受けております。

「へッ、その蛸入道が結びの神なんだから、そのうちに親より可愛くなりますよ。へッ、へッ、へッ」

「宗匠、大変酔ったようだね、大丈夫かえ。いつかのように、小間物店を並べられちゃ叶わないが」

「大丈夫、仲人のお役目が済むまでは、これでも大事な身体で」

「その仲人の役目を、明後日勤めて貰おうと思うが、どうだえ」

「御舎弟の初七日が済んだばかりですぜ」

「それでいいじゃないか。弟も女運が悪くて、死んでも泣いてくれる女の子も無いが、俺は精々弟の代りに、女の子をうんと拵えて置こうと思ってな」

「結構ッ、その心意気は嬉しいね、旦那。承知しました。――奇月、命を賭けて引受けますよ。明後日――というと三月十四日御祝言のやり直し。有難いね、旦那。その積りで前祝いに一杯、私はこの小さい杯が大嫌いでね、――盃洗を借りますよ。