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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 猿回し
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控 猿回し(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 125,671 字 · 252 頁
荒らしで、一時は相当の悪名も馳せた男です。
無口で無愛想な七之助は、弁口が上手で愛嬌のある、年上の彌十がひどく嫌いで、陰では「幇間武士」などと罵倒して居りますが、面と向っては、唯白い眼を見せるだけだが、二人の間に横たわって居る反感は、そんな手軽なものでは無く、時と共に濃密の度を加えて、何時かは爆発しそうな気合いを家中のものが暗黙の間に感ずるようになっていたのです。
主人の峰右衛門も、二人の仲の悪さには手を焼いて居りましたが、そうかと言って、そのうちの一人だけ身を退いて貰うとなると、その選択が尚さらうるさく、ブスブス燻ったような心持で、秋になり、冬になり、年を越して春になってしまいました。
ところで、剣の富山七之助には、自慢の名刀が一と振りあったのです。それは来国俊と称する二尺八寸の大業物、無銘であったが、二つ胴も試したという、見るからに物凄い代物でした。
富山七之助は、それを手入するのが何よりの楽しみで、暇さえあれば拭いたり撫でたり、打粉を叩いたり、自分の顔を映したり、二つ三つ振ってみたり、まことに他愛もありません。
丁度その日――三月十日も、自分の部屋を一パイに開けて、庭の桜を眺めながら、刀の手入に夢中になって居りました。