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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 猿回し
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控 猿回し(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 125,671 字 · 252 頁
明神下、銭形平次の住居、貧乏臭い平舞台――平次は長火鉢の猫板に頬杖を突いて、八五郎は縁側に腰を掛けたまま、不景気極まる話に日が暮れそうです。
恋女房のお静は、お勝手でせっせと夕餉の仕度でした。聞かない積りでも、ツイ耳に入る二人の愚痴を、大根を刻む手を休めて、ホッと溜息などを吐くのです。
亭主の仕事に口を出しちゃならねえ――日頃そう言われているお静です。お上の御用向のことは、右の耳から入っても、左の耳に素通りさせる気でいても、割切れない滓みたいなものが、お静の胸にこびり付いて、時々は眉も曇り、溜息にもなるのでしょう。
「俺一人が黒旋風に狙われるわけ、これを見なよ、八」
平次は懐から小さい紙片を出しました。半紙を八つに切って、又二つに畳んだ、観世捻のような代物、開くとその中には、かなりの達筆で、
十二月四日本郷一丁目池の端妙月庵
十二月七日金沢町淡路屋佐兵衛
十二月十日飯田町波岡采女
こう書いているのです。
「これがどうしたんです、親分」
「格子に縛ってあったよ」
「へェ、久米の平内様の縁結びですか」
「いや、黒旋風が、泥棒に入る場所と日割だよ」
「へェ、丁寧なことですね、親分に届けて置いて、それから押入ろうなんて」