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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 猿回し

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控 猿回し(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 125,671 字 · 252 頁

青空文庫

「まさに一言もございません」

平次は素直に承服しました、相手に言い度いだけの事を言わせて、その真意をさぐる積りだったのでしょう。

「そうわかったら、直ぐ様この倍の助勢を呼ぶか――いや、八丁堀までは間に合うまい、せめてさし叉、袖がらみ、目つぶしから梯子まで用意するか――いやそれも急場のことでは六つかしいな」

「――」

「泥棒を捉えて縄をなっても始まるまい、欲を申せば、江戸の組子全体に小太刀の一と手も教えたいところだが――」

「――」

平次は呆れ返って黙ってしまいました。平次の口添で、ようやく出来た盛蕎麦を啜りながら、この浪人者は途方もない事を言うのです。

「では、こうしようでは無いか、通りかかったのを幸い、拙者――この宇佐美敬太郎が御助勢しようでは無いか。口幅ったいようだが、拙者剣は東軍流、槍は宝蔵院流、小太刀は卜伝流、ことごとく皆伝だ、曲者の十人や二十人に恐れる拙者では無い、拙者一人が道を塞げば、池の端の一本道で、此方の防ぎは大丈夫、今晩の組子はことごとく向う側へ行って宜しい。一方は池で一方は町家、黒旋風とやらを此中に封じ込めてしまえば、先ず袋の鼠も同様だな」