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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 猿回し

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控 猿回し(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 125,671 字 · 252 頁

青空文庫

「でも、大晦日の晩には、何百両でも一ぺんに払ってやる――と言ったじゃありませんか、そんな大金の入る当てでもあるんで」

八五郎は裏へ回ってささやかな枝折戸を押して入ると、西向の狭い縁端で、懐中煙草入を取出しました。

「ハッハッハッハッ、聴いたか、――お前もあまり裕福で無さそうだから、そっと教えてやる。あれはつまり兵法じゃよ」

「へェ、兵法なんて都合の良いものですね」

「兵は詭道也――という」

「ところで、旦那、一昨夜は大層な機嫌でしたな」

「いささか酔っていたかも知れんて」

「いささかじゃありませんよ、旦那に絡まれているうちに、大事の曲者を逃してしまって、銭形の親分は怨んでました」

八五郎はツケツケと言うのです。こう言っても人を怒らせないところが、此男のもう一つの特色だったかも知れません。

「それは気の毒であったな。本郷からの帰り、人の噂であの晩何んかあるらしいというので、フトそば屋に入る気になったのだ。銭形平次は江戸開府以来の捕物の名人と聴いたが、黒旋風の方が知恵ではその上を行くのかな」

「泥棒をほめちゃいけません」

「兎も角、そう聴くと、宇佐美敬太郎相済まぬような気がする。