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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 猿回し

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控 猿回し(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 125,671 字 · 252 頁

青空文庫

、一種の要害になって居ります。

自身番の隅を借りた平次は、蔀になって居る油障子を細目に押しあけて、好きな煙草も呑まずに、更けて行く夜の往来――わけても淡路屋の入口のあたりを眺めて居りました。薄寒く曇った晩で、月が町家の彼方に落ちると、遠く犬の声が継続するだけ、大都の圧力と言った、言い知れぬ淋しさが人に迫るのです。

「銭形の親分」

その闇の中から、ヌッと出たのは、竹町の浪人者、宇佐美敬太郎の虚無的な顔でした。

「あ、宇佐美さん」

平次も、この浪人者の図々しさには、少し驚いた様子です。まさか今夜はと思って居るのに――八五郎に日と場所を訊いたにしても、ノコノコやって来る臆面もなさが小腹が立ちます。

「大層驚いたようだな、銭形の親分」

「いや、そんなわけじゃございませんよ」

「ところで、黒旋風の影法師でも見付かったのか」

「どうしてどうして」

平次は少し面倒臭そうでした。この浪人者に絡みつかれると、ろくな事がありません。

「搦め手は?」

「八五郎が見張っていますよ」

「あの長いの一人では覚束ないな、――ところで、宮永町の梅の家に泊っている、猿曳の信吉を見張っていることだろうな」