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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 猿回し
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控 猿回し(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 125,671 字 · 252 頁
――いい気味みたいなもので」
梯子を降りた八五郎は囁きました。
「馬鹿、黙って居ろ――ところで、昨夜もあの竹町の浪人者は此処へ来たそうだが、直ぐ帰ったのか」
「あっしをつかまえて無駄を言って居ましたが、亥刻半頃(十一時)帰りましたよ。下っ引を一人跟けさしたから間違いありません、竹町へ真っ直ぐに帰ったそうで」
「ところで、此辺は武家屋敷ばかりで、容易に眼は届くまいが、今朝暁けてから間もなく此辺に荷車が居た筈だが、訊いておくれ」
「へェ」
それは平次の思った通りでした。お隣の屋敷の庭男が、今朝薄明るくなってから、波岡家の不浄門のあたりに、野菜物を積んだ肥し車が一台、曳く人も無く捨ててあったが、間もなく何処かへ行ってしまったということが解りました。
「八、来い」
「何処へ行くんです、親分」
「お猿に逢って来るよ」
平次は八五郎を連れて、根津へ飛びました。宮永町の木賃宿梅の家には、猿曳の信吉と妹のお浜が、何んの作為もなく、頗る平和な顔で二人を迎えたのです。
「いよう、お浜坊、元気だね」
などと無駄を言う八五郎を眼顔で押えて、
「済まねえが、一寸お猿をつれて来てくれないか、少し芸当をやらせ度いんだ」