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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(三)酒屋火事

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(三)酒屋火事(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 146,725 字 · 298 頁

青空文庫

品の良い島田、銘仙の単衣をキリリと着て、赤い帯も、心持ち乱れた裾も、艶かしさよりは痛々しさが勝って、蒼白く引締った顔には、縊れた者の醜い苦悩の跡などは少しもありません。

それにしても、この非凡の美しさはどうでしょう。たき眉も、柔かく通った鼻筋も、円い美しい曲線を見せた顎も、死骸という感じを超越して、砕かれた人形の、砕かれ残った美しさを惜しむような、不思議な愛着を覚えさせるのはどうしたことでしょう? これで唇に生色があって、眼が活き活きと輝いていたら、場所柄の水茶屋を漁り尽しても、三人とは並ぶ者がないはずです。

娘の胸には、両刃の剣が刃並を水平に、肋骨の間へグサと突き立っておりました。

乳の少し上、深さにして三寸ぐらい、血潮は、胸から帯をひたして、凄惨を極むる姿、御用を勤める者でなければ、長く見てはいられません。

「これほどのきりょうなら、すぐ身許は解るだろうな」

平次は独り言ともなく言いました。

「判りましたよ、親分、野次馬の半分は見知り人です」

橋番所の老爺です。

「誰だい」

「向柳原の梶四郎兵衛様の御嬢様で――」

「なるほど、それじゃ」

平次はうなずきました。