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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(三)酒屋火事

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(三)酒屋火事(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 146,725 字 · 298 頁

青空文庫

昂然として、何の恐れもありません。

「親方、大変なことをやったそうだな」

と平次。

「へッ、へッ」

松五郎は泣き笑いをしていたのです。

「よく切れるネ、あの脇差は」

平次は変なことを言い出しました。

「家重代の脇差だから、斬れもしますよ」

「一と太刀でやったのかい」

「ヘエ」

「見事な袈裟掛けだネ」

「そうでもねえよ、親分」

話が次第にとん珍漢になるのを、重吉は酸っぱい顔をして眺めております。

「何か書いた物を置いてあったそうだな」

「ヘエ、何、ほんの悪戯で」

「お前のところのお宗旨は何だい」

「法華ですよ、親分」

「それでお題目を書いて、手にかけた者の死骸の側へ置いたのか、大した心掛だな、親方」

「それほどでもねえよ、親分」

松五郎の極り悪そうな顔というものはありません。

「あの紙はどこで買ったんだ、奉書のようだが――」

「日本橋で買いましたよ、特別上等の奉書で」

話は次第に脱線して行くばかりです。

平次はこの辺で切上げると、フラリと外へ出ました。

「銭形の親分」

重吉は狐につままれたような顔です。

「重吉兄哥、あの通りだ、――下手人は松五郎じゃねえ」

「でも白状しましたぜ」

「そう言って威張りたかったんだ、――松五郎はそんな男だよ」