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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(二)八人芸の女

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(二)八人芸の女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,562 字 · 291 頁

青空文庫

「とんでもない。子刻の鐘を聴いて、それを合図に裏口から入れて貰って、朝の卯刻(六時)の鐘を合図にそっと脱け出す寸法なんで、へッ」

「嫌な笑いようだな」

「相済みません。ヘエ、人殺しの引合いに出されるんでなきゃ、滅多なことでは言えない事で」

手の付けようがありません。

平次はいい加減にして切り上げると、その場からすぐ坂本町へ飛んで行きました。小唄の師匠のお栄というのは、二十五六の下谷中で騒がれている年増で、平次の峻烈な問にも、最初は容易に応えませんでしたが、半刻あまりの根比べで、とうとう兜を脱いでしまいます。

「人気家業ですから、どうぞ、親分。ここ限りでお聞流しを願いますよ」

「それは心得ているよ。昨夜、誰が一体ここへ泊ったんだ。それを言って貰えばいい」

平次は膝を乗出しました。

「実は――。上根岸の植木屋の重吉さんですよ。半歳前から、人目を忍んでおります」

「時刻は?」

「子刻の鐘を合図に来て、卯刻には帰ります」

平次は唸っております。念のため婆やさんに聴くと、これは少し耳は遠いながら、恐ろしく感の良いのが自慢で、お栄の言葉を、はっきり裏書します。

「植木屋の重吉さんは、三日にあげず忍んで来ますよ。