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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(二)八人芸の女

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(二)八人芸の女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,562 字 · 291 頁

青空文庫

昨夜も来ましたとも。子刻の鐘と一緒でしたよ。私は御酒の支度をすると、すぐ引込むことにしているんです――当てられて敵いませんからねえ。ホッ、ホッ、ホッ」

平次は恐れをなして、引さがったことは言うまでもありません。

「やはり手代の茂助かな、それとも?」

女房のお定か、下女のお金か――醜い女の嫉妬が、どんな恐ろしい事を仕出かすか、平次はあまりにいろいろの例を知っております。

「親分」

「あッ、喫驚するじゃないか、八」

ガラッ八は往来で待っていたのでした。

「今度は早かったでしょう」

「なんだ」

「あッ、忘れちゃ情けない。――溜屋の主人の粋事筋、半日がかりでみんな手繰りましたぜ」

「どれどれ、その蚯蚓ののたくったのを見せてくれ。お前の書いた字を読むと、大概の癲癇が治る」

平次は無駄を言いながら、ガラッ八の調べ書を取上げました。

やぐら下   おぎん

ゆしま    おこま

くるまざか  さのやのむすめ

さかもと   おえい

よし丁    若きち

「面白いな、ガラッ八」

「これが夫婦約束をしたのだけですぜ。稼ぐもんでしょう」

とガラッ八。

「おえい――というのは坂本の小唄の師匠だろう」

「え、あの凄い年増で、一しきり、溜屋の主人に熱くなっていたそうですが、近頃は河岸を変えたそうで」