Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

Read 大岡越前 (おおおかえちぜん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 218,436 characters · 437 screens

Aozora Bunko

鳴らぬ琴

「じゃあ、待っておいで」

お縫は、かれをおいて、気がるに、やしきの内へもどって行ったが、やや暫くして、ようやくすがたを見せたとおもうと、

「久助とやら、市十郎さまは、やっぱり、そなたのような者は知らぬと仰っしゃる。そして、蔦屋へ書物など註文したおぼえもないということです。おまえ、どこぞのお客さまと、やしき違いしているのじゃありませんか」

いい捨てると、かの女は、おもわぬ暇つぶしを取りもどすべく急ぐように、薬研坂を小走りに下りて行った。

鳴らぬ琴

忠右衛門忠真は、親類じゅうでの、律義者で通っていた。元禄の世の、この変りようにも変らない、典型的な旧態人であった。

が、その忠右衛門も、子のためには、意志を曲げて、きょうは、老中の秋元但馬守の私邸を訪うて来たとかいって、気だるげに、夕方、帰っていた。

「来春には、婚儀のおゆるしが出るように、何とか、その前に、お目通りの機会をつくる――と、但馬どのの、仰せじゃった。多分、あてにして、まちがいあるまい。……権門へ頭をさげて通うくらい気のわるい思いはない。やれやれ、さむらいにも、世辞やら世故やら、世渡りの要る世になったの」