Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Read 大岡越前 (おおおかえちぜん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 218,436 characters · 437 screens
裁かば裁かれん
「吉宗が、いつ、法を犯したと申すのじゃ」
「左様な、些々たる一個の詮索ではござりませぬ。――溯れば、ここ二十数年にもわたる大罪科を、前々代のときから、当将軍家は犯しておられまする」
「……ううむ。それを、いうのか」
吉宗の激血は、やや面から醒めた。得心の扉が開きかけた容子も見える。
――と、感じると、越前守も、にわかに、心の梁が、弛みかけた。ああ、お解りだ、必ずや、解って下さるとは信じていたが、……もう大丈夫と、思うと共に、あやうく、睫毛が熱く濡れかけて来るのであった。
「……そうか。そちは、それをいおうというのか」
吉宗は、もいちど、心の底からうめいた。
裁かば裁かれん
八代将軍の職をうけてから、吉宗はまだ幾年にもなっていない。彼の革新的抱負は、甚だ、果断で勇敢には見えたが、その実績は、なお思うようには、行われていない。
形は、変るが、中は変らないのだ。威令には伏するが、内実の腐敗は、かえって、被る殻を強くさえしている。
悪習の根はふかい。弊政の禍因は遠い。それを、一朝にして、改革しようと意気ごんで職についた三十五歳の新将軍は、近頃ほとほと理想と現実との、遠さを、またいかにその実現のむずかしく、行われ難いものであるかを――敗軍の将のように痛感していた。