Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,106 characters · 292 screens
「こいつを抛っておくと、八とお品さんの命が危ない、――俺の言うことを黙って聞くだろうな」
「…………」
恐ろしい不安に怯えて、お静は夫のやつれた顔を見つめました。
「この平次は大病人だ、外へ出る気遣えはねえ」
「…………」
「そう世間で思っているのに、――八の野郎が両国へ行ってから、変な野郎がこの路地の外をウロウロしてるようだ」
「…………」
「俺は病人だ、そのうえ見張られている。――いいか、お静、お前は俺の代りに、東両国へ行って、一と晩見張っているんだ」
「私が?」
「いやだとは言わないだろうな」
「ハイ」
外はもう真っ暗でした。
「ここには婆さんがいる、俺のことは心配せずに行くがいい」
「…………」
お静の遠縁の婆さんが一人、この間から来て手伝っているのでした。それから半刻ばかりの後、春の夜風の薄寒さを、お高祖頭巾に凌いで、お静はたった一人路地の外へ出て行きました。いつもの縞の袷、素足に草履、若さと軽捷さは申分もありませんが、闇に匂う艶かしさは、さすがに痛々しい姿でした。
真っ暗な川岸伝いに両国へ若い女の夜道は楽ではありませんが、お静は側目もふらずに急ぎます。後ろからそれを追う男が一人、即かず離れずに来るのを、お静は知ってか知らずか別に気にとめる様子もありません。