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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,106 characters · 292 screens
銭形平次捕物控
一
一
「親分、どうなすったんで?」
ガラッ八の八五郎は、いきなり銭形平次の寝ている枕許に膝行り寄りました。
「八か、――風邪を引いたんだよ。寝ているのも馬鹿馬鹿しいが、熱が高くて我慢にも起きちゃいられねえ」
平次は手拭で額を縛って、真っ赤な顔をしてフウフウ言っているのです。
「そいつはいけねえ、悪い風邪が流行るんですってね、気をつけなくちゃいけませんよ」
ガラッ八は世間並の事を言いながら、平次の額へそっと触ってみるのでした。
「寝込むほど患ったのは、六つの時麻疹をやってから、ツイぞ覚えのねえ事さ。鬼のかくらんだよ」
「岡っ引の風邪でしょう」
「ふざけちゃいけねえ、病人をからかったりなんかしやがって」
相当苦しそうな平次は、ツイ八五郎の軽口に応酬して、ポンポン言ってみたりするのです。
「からかっているわけじゃねえが、親分が患った日にゃ、御府内は闇だ」
「お世辞なんか言いやがって、馬鹿野郎ッ」
「へッ、お出でなすったね、その威勢のいい馬鹿野郎が聞きたかったんだ」
ガラッ八は掌で、自分の額を一つポンと叩くのでした。
「呆れた野郎だ、見舞に来たんだか、遊びに来たんだか、わかったものじゃねえ」