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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九)不死の霊薬

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,106 characters · 292 screens

Aozora Bunko

六

「とんでもない、親分」

平次の言葉の効果は、全く見事というの外はありません。理智的に見えた文三郎が、すっかり度胆を抜かれて、急にソワソワし始めましたが、平次の問に対しては、まだ何と答えたものか、思案も定まらない様子です。

六

間もなくガラッ八は若い按摩を一人つれて来ました。この界隈を流して歩く、佐の市という二十七八の男、物の黒白ぐらいは見えるようですが、按摩も鍼もなかなかの上手な上、持前の愛嬌のよさが手伝って、旦那衆にも可愛がられております。

「佐の市か」

「銭形の親分さん」

佐の市は声のする方へヒョイとお辞儀をしました。

「お前が帰る時、白石屋の主人はたしかに生きていたかい」

「それはもう、親分さん、変ったことがあれば、黙って帰るような事はいたしません。――揉んでいるうちに、鼾をかき始めた様子だから、掻巻をお掛けして、そっと帰りました」

「鍼は?」

「持ってはおりますが、白石屋さんは鍼をお嫌いで、一度も打ったことはありません」

「お前の鍼箱を見せてくれ。鍼が足りなくなっているようなことがあるかも知れない」

「ヘエ――」

平次の言葉の意味を掬み取り兼ねながらも、佐の市は懐中の鍼箱を取出しました。