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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,106 characters · 292 screens
七
が、この眼では」
「見当ぐらいつくだろう」
「衣摺れの音と、柔かい息づかいを聞いたように思いますが――」
佐の市の言葉は暗示的です。絹物を着ている、柔かい息づかいの人間というと、女房のお吉と姪のお雪の外にはありません。
「話は違うが、お前の眼はいつ頃から悪くなったんだ」
「五つの時からですよ、親分」
佐の市の言葉には、諦め切れない悲しみがあります。
「生れは?」
「御当所でございます」
「師匠は?」
「沢田検校様」
少しの疑いもありません。
「有難う、お蔭でいろいろの事が判った。もう帰ってもいい――八、誰かに送らせてやるがいいぜ」
平次は佐の市を送り出してホッと息づきました。
七
白石屋の四方は下っ引を動員して、隙間もなく見張らせましたが、そのためか、今晩来なければならぬはずの、稲妻小僧の六は、いつまで経っても姿を見せません。
「もしや?」
平次の胸には、大きな疑問が浮びました。稲妻小僧の六という曲者は誰かの姿を借りて、この包囲陣の中――白石屋の家の者として、澄ましているのかも判らないと思い付いたのです。
平次は八五郎を呼んで、二つ三つの用事を言い付けました。
「誰でも構わない、一人は勘定方の御係りへ行って、三年前宇津谷峠で斬られた、中根鉄太郎という人の身寄りの者の居るところを聞いてくれ。