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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,106 characters · 292 screens
四
「長屋はたった四軒、右側の二軒は空店で、お秋の家は左側の奥、私のうちの隣でさ、稼業柄思い切り汚造りな暮し向きだから、外から泥棒か入りっこはありません。金のあるのを知っているのは、相長屋のあっしと、あの三人だけでさ。泥棒はあっしでなきゃ、丑松かお徳で、こんな解り切ったことはないでしょう、親分さん、――憚りながらあっしには覚えがねえ。すると、やはり丑松かお徳」
この際限もない屑屋の話を、ガラッ八は神妙に聞いておりました。三百両の紛失は知らなかった様子ですから、泥棒はたぶん丑松かお徳でしょう。
その頃の三百両は、今(昭和十年頃)の三万円にも相当する大金で紛失の訴えがあれば、御用聞が一応調べてみるのも、当然のことでもあったのです。
四
ガラッ八は屑屋に別れて、飴屋の丑松の家へやって来ました。
「御免よ、――丑松は居るかい」
荒い格子を覗くまでもなく中は見通しの二た間、形ばかりの古い箪笥が一と棹、葛籠が一つ、割れた獅噛火鉢、芯の出た座蒲団など――見る影もない惨憺たる住居です。
「誰だい、人を呼び捨てになんかしやがって、面を見せろ」
隅っこでとぐろを巻いていたらしい中年男は、褞袍へ袖を通して、起き上がりました。