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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九)不死の霊薬

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,106 characters · 292 screens

Aozora Bunko

こいつはいけねえ――、ガラッ八はそう言いながら、額から月代を掌で撫であげました。

そのうちに、もう一度丁寧に挨拶をして、娘は帰って行く様子。真昼の光の下で見ると、少しふけて、二十一、二と踏めますが、身装は思いの外リュウとして、その明るく愛嬌作った美しさも尋常ではありません。

「八、何を驚くんだ」

銭形平次は早くも見付けました。

「ヘエ――」

「女の子が怖いのか、戸袋の蔭なんかへ隠れて」

「怖いわけじゃありませんが、へッへッ」

「いやな笑いようだな、まア入れ」

平次は呑込み兼ねた様子で八五郎を誘い入れました。美しい小春日が畳の上を這って、今まで敷いていたらしい、薄い座蒲団からユラユラと陽炎が立ち昇ります。

「あの娘は何を言ったんで、――親分」

ガラッ八は頸のところを掻きながら、膝小僧を揃えました。

「つまらねえ紛失物さ、――ところで、お前の方にも心当りがありそうだ。一体あの娘をどこで口説いたんだ」

平次は何やら嗅ぎ付けた様子で、ニヤリニヤリと陣を布きます。

「口説いたわけじゃありませんよ、親分」

「じゃ口説かれた口かい、頼母しいぜ、八」

「冗談で」

「早く白状しな、――俺は出て行かなきゃならない」