Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,106 characters · 292 screens
平次の調子には、何か沁み込むような思いやりがあります。
「どっちでもありませんよ、親分さん」
「と言うと」
「私は、たった一人の母親さえ満足に養えない、意気地のない男です。世間で評判するような孝行者なんかじゃありません」
「でも、お上から御褒美を頂いたことがあるそうじゃないか」
一昨年の夏、親孝行の廉で町奉行所から青緡何貫文かの褒美を貰ったことは、かなり有名な話です。
「もったいない事だが、あれはお上のお鑑定違いですよ、――親孝行なんてとんでもない事だ。たった一人の母親をせめて戸も障子もある家へ入れて、甘い物でも食わせて、暖かい物でも着せて上げたら親孝行にもなるだろうが」
「…………」
藤六は遥かの方、筵で閉いだ鳥の巣のように憐れな自分の家を眺めて、ポロポロと砂浜に大きな涙をこぼすのです。
「それが、――金ずくで動きの取れないようにされたとは言いながら、親孝行の見世物にまでされて、――私はなぶり殺しにされるような念いでしたよ、親分。――生れて始めての裃なんか着せられて、猿芝居のお猿のように、百人千人の見物の前に、親孝行はこうでございと、この顔をさらす辛さを考えて下さい」