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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九)不死の霊薬

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,106 characters · 292 screens

Aozora Bunko

「お春はときどき神田の俺の家へ遊びに来るがいい、女房が話相手ぐらいにはなるだろう」

「…………」

「こんど来るまでに、畳と戸のある家へ引っ越してくれ。一度お前のおっ母アにも見舞が言いたい」

「…………」

「八、帰ろうか」

伏し拝む兄妹を後に、妙に鼻をつまらせているガラッ八を促して、平次は神田へ向います。

その日も秋の美しい夕暮でした。

*

「親分、絵解きをしておくんなさい。――釜はいったい誰が増屋の井戸へ隠したんで」

ガラッ八は追いすがりました。

「藤六だよ」

「ヘエ――」

ガラッ八は少し予想外な様子です。

「増屋が藤六を金で縛って、親孝行の見世物なんて、あんなタチの悪い芝居を打った、――釜は金被せの大贋物さ。それを藤六の親孝行の徳で網へかかった事にし、お上のお目こぼしをいいことに金儲けを企んだのさ」

「そこまではあっしにも解るが」

「親孝行の見世物にされて、藤六はどんなに辛かった事か、あの男の口から聞いたろう。あれは本当の孝行者だけに、見世物にされるのがたまらなかったのだよ。そうかといって三十両の工面はつかず、妹も人身御供に上げられず、腹の中で泣いていたが、とうとう我慢が出来なくなって、あの茶釜を隠したのだ。