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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,106 characters · 292 screens
平次は自分で二階へ登ってみましたが、普請が古いので、段々がきしんで変な音を出します。昼ではあまり気が付きませんが、夜分目ざとい人なら、気が付かずには済まないでしょう。
「よく鳴る階子ですね、親分」
八五郎は下から声をかけました。
「手洗に起きたと思うだろうよ」
「なるほどね」
平次の言葉の含蓄を味わうようにガラッ八は首を傾げました。
「主人を怨んでいる者は?」
平次は番頭の用助に定石通りのことを訊きました。
「ヘエ――」
用助は淋しい苦笑いを浮べて、久太郎を顧みます。
「私の叔母ですが、敵の多い人でございましたよ」
久太郎は引取って答えました。
「家の者の中では?」
と平次。
「まさか殺すほどの悪人もおりません」
「すると、怨んでいる者はあったわけだね」
「…………」
久太郎もさすがに口をつぐみました。しかしこれは久太郎の口を開かせるまでもありません。小僧や下女や、近所の衆や親類の者の口裏から、平次と八五郎は、やがて重大なことを聞込んでしまったのです。一と口に言えば、鳴子屋の家の者で、主人のお釜を怨んでいない者は、たった一人もいなかったということでした。
奉公人達は、選りに選って親許や家の無いのばかりで、そのうえ給料を一年も二年も溜められ、それを棒に振る決心でなければ、鳴子屋から出るわけに行かず、番頭の用助などは年に五両