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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,106 characters · 292 screens
七
光川左門太の懊悩は、見る目も気の毒でした。平次はガラッ八に合図をして、そっと往来に飛出すと、額に泌む汗を拭いて、ホッと溜息を吐きます。
七
「親分、驚いたネ」
ガラッ八は頬を吹く春の風を胸いっぱいに吸いながら、少し道化た調子でこう言いました。
「驚いたよ、――でも親殺しを縛らなきゃなるまいかと思った時は、本当に岡っ引が嫌になったぜ」
と平次。
「これからどうするんで、親分」
「振出しまで戻るのさ、――三河屋へ行ってみよう」
二人はもう一度三河屋に取って返して、主人の甚兵衛にその晩のことを訊ねました。
何べんも何べんも繰返したことで、ツイ馴れっこになる口調へ平次は時々ブレーキをかけて、この上もなく念入りに、あの晩のことを再現させて行ったのです。
「すると、藤枝蔵人の話を聞いたのは、光川さんの外には、お前さんと佐野屋と、伊勢屋だけだったのだね」
平次はもう一度この点へ念を入れたのです。
「ヘエ、――それだけでしたよ。ここは二た間だけ離屋になっていて、奉公人達も滅多に来るところでなく、後ろは土蔵で、表は明けっ放しの中庭ですから、猫の子が来ても判ります」
主人の甚兵衛の言うのは尤もでした。