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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,106 characters · 292 screens
花嫁は評判の堅い娘で、八百峰の総領とは許嫁同士、色恋の道行でないことは、口善悪ない近所のお神さん達までが牡丹餅判を捺します。
それに、盗まれた花嫁は、暮から勘定して四人目、手口はそれぞれ違いますが、とにかく、余程深い企みのあることは、鼻の良い平次には、判りすぎるほど判ります。
それから三日目。
「親分、聞きなすったか」
朝のうちから、ガラッ八が呶鳴り込んで来ました。
「何だ、八、相変らず騒々しい」
「石原のも失策ったんですとさ」
「何?」
「昨夜柳原河岸で、石原の利助親分があの大きい眼を光らせている中から、五人目の花嫁が攫われたっていいますぜ。材木河岸の美倉屋の娘で、今度のは大した容貌だ」
「フーム」
「これで五分と五分だ、石原のでさえ馬鹿にされたんだ、八五郎ばかりが失策ったんじゃねえ――、態アみやがれだ」
「馬鹿野郎ッ」
「へッ」
「石原の兄哥が失策ったからって、手前のドジの言い訳になるか」
「ヘエ――」
「俺はそんな心掛けの人間は大嫌いなんだ。こっちはこっち、石原の兄哥は石原の兄哥だ。人の失策を喜ぶような野郎は、俺のところにいて貰いたくねえ」
「ヘエ――」
「手前は人間はガラガラして、まことに出来のよくねえ野郎だが、悪気のないところだけが取柄だったんだ」