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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,106 characters · 292 screens
平次は夜となく昼となく、神田から日本橋を、へとへとになるまで彷徨い歩きました。途に落ちた鼻紙にも驚き、按摩の笛の音にも胆を冷して、本当に気の触れた犬のように駆け廻ったのです。
しかし何もかも無駄でした。もしかしたら、六人の花嫁と一緒に、美しいお静の死体は、今日にも大川に浮くかも知れない――といった恐ろしい幻想に、平次は休むことも眠ることも出来ない有様になっておりました。
犇々と身に迫るのは、喰い入るような恐ろしい後悔です、疲れ果てた足を引摺るように、聖堂裏から昌平橋を渡って柳原の方へ出ようとする平次の、塩垂れ果てた肩へ、後ろからソッと手を置いたものがあります。
「親分、御心配ですね」
振返ってみると、髪結のお鶴、醜い顔ですが、それでも人のいい笑いを浮べて、慰め顔に、平次の顔を差しのぞきます。
「あ、お鶴さんか」
平次は夢見るように立止まりました。
「お静さんの行方は、少しも判りませんか」
毛筋を鬢に差して、襟の掛った小袖、結び下げた黒繻子の帯は、少し猫じゃらしに尻を隠します。
「困ったよ、お鶴さん、お前さんにも心当りはないだろうか」
「ホ、ホ、ホ、銭形の親分がそんな事をおっしゃっちゃ困るじゃありませんか、でも、今度ばかりは、本当にお気の毒ねえ」