Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,106 characters · 292 screens
驚いたのは、お吉と一番仲よくしていたお静です。
平常から心掛けの良い、少し気の弱いお吉が、どんなに嫉妬に眼が昏んだにしても、そんな大それた事を仕出かそうとは思われません。一と言お吉のために――と思わないではありませんが、奉公人の悲しさで、奥様へツケツケと意見がましい事が言える身分でもなく、それに、お吉を封じ込んだ納戸の前には、少しばかり職業的な物凄さを持った、老獪無比の岡っ引が、鼠一匹もただでは通さじと見張っているのです。
思案にくれているところへフラリとやって来たのは、お静とは許嫁の仲の、銭形平次です。
新三郎はまだ下総から帰って来ないので、用事は足りませんが、奥へちょっと挨拶をして、何の気もなくお勝手へ下がろうとすると、日頃仲のよくない石原の利助が、閉め切った納戸の前に座蒲団を敷いて、少し脂下がりに安煙草の輪を吹いております。
「お、石原の兄哥。どうしたい」
「銭形のか、久し振りだったな」
「掛け違って久しく逢わねえが、そこで何をしているんだ」
「なアに、何でもねえよ」
「…………」
少し妙な調子――、頭の早い平次は、仔細ありと見てとって、そのうえ追及をせずに、天気の挨拶かなんかをして引下がってしまいました。