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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,106 characters · 292 screens
九
立上がって戸口の方へ探り寄ろうとすると、床板の釘が抜けていたものか、それとも、陥穽の仕掛になっていたものか、足の下の板が一枚、パッと跳ね返ると、
「あッ」
新三郎の身体は、数十尺の下へ、支えるものもなく落ちて行きます。
九
「へッ、へッ、とうとう陥ち込みやがったか」
どこからともなく、闇の中の人声。
燧石に鎌の当る音がすると、パッと蝋燭が点された。
見るとそれは、今まで臆病者とばかり思い込ませていた若党の勇吉。妙に引緊った凄い顔をして、裸蝋燭を片手に、新三郎の陥ち込んだ穴を覗きます。
「おーい兄哥」
「勇吉か」
遥かに下からは応ずる声。
「野郎はどうなった」
「まだ落ちて来ねえぞ」
「そんな事があるものか」
「落ちて来さえすりゃア、ボチャンとか何とか音がするだろう――万一舟か岸へ這い上がるようなら、竹槍で芋刺にするつもりで待っているが、一向音沙汰はねえぞ」
「はてな」
勇吉は左手の蝋燭を穴の中へ差し込むようにして下を覗きました。
「あッ、居るぞ、居るぞ」
「それ見ろ」
床の下の逞しい梁から垂れた握り太の麻縄。その中ほどのところに、雁字がらめにして猿轡を噛ませた、新太郎とお静を吊してありますが、その縄の上から三分の一のほどのところに、もう一人、人間がブラ下がっているのです。