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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,106 characters · 292 screens
お品の華奢な指は、思いのほか器用に、算盤の珠の上へパチリパチリと動きました。
「あッ、――節分から百四十四日目というと五月の五日だ」
「今日?」
ガラッ八も思わず息を呑みます。
「百四十四日と書かずに、百四十四夜と書いたのは、たぶん今夜のことだろう」
平次の声も緊張しました。
「どこでしょう」
とお品。
「それが判りゃ」
三人は顔を見合せるばかりです。
「少し考えよう。――たった一と晩で、五千両の金と、御用金泥棒が二人飛ぶかも知れない」
平次は深々と腕を拱きます。こんな時こそ、江戸開府以来の素晴らしい智恵を、手一杯に働かせるところでしょう。
「親分、本当に小舟町でしょうか」
とガラッ八。
「まず間違いはあるまい。この曲者は、恐ろしく洒落っ気がある」
「その小舟町に、赤井市兵衛がいるのも確かでしょうね」
お品もたまりかねて口を出しました。
「それも間違いはあるまい。五千両の金がありゃ、人の物でもただ取ろうという心掛けの人間は、山里に隠れて三年の間鹿や猿と一緒に暮す気にはなるまい。金を隠すにも、贅を尽すにも、江戸は一番いいところだ」
「…………」
「八」
「ヘエ――」
「下っ引を五六人駆り集めて、小舟町中を当ってみてくれ。