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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,106 characters · 292 screens
九
お嬢さんが今日まで我慢していたのはみんなそのためでした」
「お前は何だ」
「中根様の用人、青山文三郎」
「そうか」
平次も何やら予想外なものがあった様子です。若い文三郎の献身的な働きは、決して愛や情けから出発したものばかりではなかったのでした。
九
「あッ、危ないッ」
文三郎は絶叫しました。振返ると、三四間先の廊下を、女がお雪に追いすがって、髪を掴んで引戻しざま、キラリと匕首を振り冠ったのです。蹴飛ばした雨戸の間から、朝の光がパッと射します。
「己れッ」
平次の手からは銭が飛びました。
「あッ」
たじろぐ匕首の女、飛込んだガラッ八は、その後ろからギューと羽交締めにします。
「あッ、気障だよ、畜生ッ」
女が身を沈めると、ガラッ八の巨体は縁側にもんどり打ちました。
「御用ッ、神妙にせい」
飛込む平次。
「亭主の敵を討った私に、何が御用だい」
振り冠った乱髪の中から、激怒に引きつるお吉の顔が、朝の光を半面に浴びます。
「稲妻小僧が女と知らなかったばかりに、余計な人間を一人殺させたよ。サア、もう逃しはしないぞ」
と平次。
「馬鹿におしでない」
匕首と銭とは、しばらく宙に相打ちました。