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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Read 大岡越前 (おおおかえちぜん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 218,436 characters · 437 screens
かれは、何とかして、江戸に火災をなくしたいと、考えた。
「火事は江戸の花」――などというものの、明暦の大火には、全市の半分が焼け、死傷十万という災害を生んでいる。
万治三年の年などは、正月二日から三月末までのわずかな間に、百五回という火災数の新記録を出している。
越前守が、自分の幼いときから、今までに、覚えている大火を憶い出してみても、何十回か知れないほどである。
(捨てておけない)
と、かれは、市井の悪党以上、この災魔をなくすことの方を、急務と、信じたのであった。
そこで彼は、火災を起した火元の罰則を立て、大火となったときは、さらに、町名主以下、家主、地主たちにまで、連帯の責任を問う法令をもうけた。
――が、むしろ、火の出ないうちの、予防策に、かれは重点をおいた。
市中にたくさんな、火防地を設けた。
家屋の構造に、それまで制約されていた条件(たとえば、大名武家以外は、瓦葺きの屋根はできなかったなどの――)を撤廃し、自由に、防火本位の家を、たれでも建てられるように、市政を改めた。
また、消防組を、新たに、組織させた。
全市の、各町ごとに、常備の駈付け火消しを、三十人ずつおいて、ジャンと鳴れば、競って、鳶口、まといを振り出して、消火に協力する。