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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Read 大岡越前 (おおおかえちぜん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 218,436 characters · 437 screens
……あわれや、亀次郎)
かれは、従兄の亀次郎に、こういう同情を心からいだき、また、偽りなく自分にもある亀次郎と同質な人間性を認めていた。
で、亀次郎が初め、呶号して、自分を嘲罵するのも、もっともな事だと、聞いていた。その素直さがまた、やがて亀次郎の方をも、素直に返らせたことに違いなかった。
大亀の吟味や聞き取りは、かくてすらすら運んだ。翌日、また翌々日にかけ、赤螺三平や阿能十蔵の調べもどしどし進捗した。
阿能十蔵の吟味中には、越前守の方から、こういう事件が、質問され出した。
「以前、大岡市十郎なる者を、存じていたか」
「もちろん、知っている」
「市十郎にたいし、化物刑部の土蔵に監禁されていたお袖に会わせてやると約し、市十郎の親戚、小普請組の大岡兵九郎の屋敷から、幕府お金蔵の絵図面を、盗み出させたことがあるな」
「ある」
「その絵図面は、その後、いかがいたしたか」
「刑部に、売りつけた」
「刑部はそれを?」
「一時はよろこんだが、後に、役に立たねえ絵図と分り、金蔵破りは、やらなかった」
「それも、幕府顛覆の軍用金にするつもりであったか」
「その辺、刑部の腹は、おれたちには分らねえ。